リュート(1943)
アンリ・マティス(1869-1954)
油彩/キャンバス
ポーラ美術館
この絵は初めて見たときにはずいぶんと稚拙な絵に見えました。壁紙や絨毯の色や柄の方がインパクトがありすぎて女性がまったく目立っていない。テーブルの上の葉っぱなんて女性の頭の4,5倍の大きさがあって遠近感もなんかおかしい。でもちょっと離れて見ているうちに、なんか良くなってくるんです。色のバランスとか模様とかが。一面朱色の左側に、まるで壁紙の柄の延長のように淡いピンク色のドレスが描かれていて、それから真ん中にアクセントのような青系統の色。
ポーラ美術館のホームページでこの作品の解説を読んでみましたが、この絵を見て初めに感じた印象こそ、マティスが望んでいた効果のようです。この模様と色を味わう絵画なんですね。人物が描かれている作品では、たいていの人は固定観念で人物がメインであるとの思い込みで絵を見ます。まさか人物が描かれていて柄と色の方がメインだなんて思いませんもんね。ちなみに「リュート」という題名の意図は、この色と模様と楽器の相乗効果で、この絵から音楽的なイメージが想起されるようにと付けられたようです。なるほどそう言われてみて初めて、この画面からこの色と模様にマッチした音楽が流れてきました。
できるだけ先入観なしに作品を味わいたいので、作品解説はなるべく読まないようにしているのですが、でも読まなければリュートの意味するところを理解せずにお墓に入るところでした。読んだ方が良いみたいですね。