アジアにめざめたら
アートが変わる、世界が変わる
1960-1990年代
AWAKENINGS ART IN SOCIETY IN ASIA 1960s – 1990s
2018年10月10日から12月24日まで
東京国立近代美術館
本展は写真撮影不可なので、代わりに常設展に展示されていた現代アートの写真を1枚入れておきます。
この作品は鉄板の片側がボルトによって少し浮いています。解説文を読むと「ボルトによって作られた一時的な仮の空間」に思いを馳せる作品、なのだそうです。解説文を読む前は完全に理解不能でしたが、読んだ後は若干この面白さが解ってきたような気がします。
このように土、石、木、鉄などの素材を、ほとんど手を加えずに使用して、存在や空間などの理論を表現しようという美術運動を「もの派」と呼ぶのだそうです。
従来の美術品とは異なる感覚を追求した作品の例として1点紹介しました。これから紹介する現代アートがすべてこの「もの派」の作品であるという意味で紹介したわけではありません。
本展で面白かった作品を数点紹介します。
1.<川に浮かぶ燃えているキャンバス>1964年、1988年頃 イ・スンテク(1932- )
タイトル通り、燃やされているキャンバスを川に浮かべた作品で、絵画作品と写真作品が並べられています。絵画を破壊・放棄しているモチーフを絵画や写真作品にしているという自己撞着の面白さと、火と水という対比的かつ視覚的な美しさ、自然の織りなす神秘さも感じました。
2.<無題>1979年 パク・ヒョンギ(1942-2000)
かなり大きめの石が4つ5つと上に積み重ねられていますが、そのあいだには石の映像が映っているブラウン管テレビが挟まれています。石の大きさは実物の石も映像の石も互いに大きさのバランスが取れていて一種の美を感じます。しかし同時に実物の石のあいだに映像の石が挟まれているという奇妙な感覚も感じるため、何とも説明のしようのない異様な感覚に襲われます。
3.<氷1996、中原(中国)>1996/2005年 王晋(ワン・ジン)(1962- )
デパート前の広場に50センチ角程度の氷のブロックが数十メートルに渡って並べられています。高さも大人の背丈くらいまで積まれているので完全に氷の壁となっています。そしてこの氷の中には化粧品、電化製品、宝飾品が埋め込まれているのです。集まった人々はそれらのものを取り出そうとそれぞれ必死になって氷を壊していきます。その光景をモノクロで写真撮影し、大きく引き延ばして展示している作品です。壁を壊すのは人々の欲望である、ということなんですね。これ好きです。
以上、3点だけですが紹介してみました。説明しにくい作品が多かっただけで、決して3点しか興味深い作品が無かったのではありません。