パブロ・ピカソ(1881-1973)
油彩/キャンバス
国立西洋美術館
かなり前から国立西洋美術館で展示されている作品なのですが、いくらピカソと言えども、というかピカソゆえにどこが良いのかさっぱり解らず、今までずっと素通りしていました。今回はその良さがやっと理解できたので取り上げた・・・訳ではなく、逆に未だに全然解らないので取り上げてみることにします。
この作品をぱっと見て、おお素晴らしい!、と感動する人はまず居ないでしょう。事実わたしはこの絵の前にたたずんでいる人を今までに一度も見たことがありません。たたずんでいるとしたら、この作品の隣に掛かっているミロの抽象画「絵画(1953)」か、デュビュッフェの「美しい尾の牝牛(1954)」の前です。
しかしこの作品が国立西洋美術館にずっと展示されているということは、そんじょそこらの絵画ではないということを意味します。少なくともわたしはそう理解します。きっとこの作品には何かが隠されているに違いありません。もしかするとそれは知識や教養が無ければ理解できないものなのかも知れない、理解できないということはわたしは洗練されていない人間なのか、がさつな人間はその良さを堪能できないのか。何やら敗北感にも似た感情に襲われながらもひたすらこの作品を見続けていると、やがて奇跡が起こります。眼が慣れてくるのです。各色が絶妙なバランスの上に配置されているように感じ、ばらばらに配置された手足などのパーツがさも重要な意味を持ったものであるかのように感じてきます。そこまで深読みをするようになれば、これはもうピカソのファンと言っても良いでしょう。
いわゆる美しい作品はとっつきやすいですがすぐに飽きてしまいます。ピカソは鑑賞者に深読みをさせる作品を作ったのです。