2019年2月2日から2019年3月24日まで
埼玉県立近代美術館
まず会場入り口前のプロジェクション映像にやられてしまいました。実現しなかった黒川紀章の二重らせん構造物や磯崎新の空中都市が現在の東京の風景の中に入り込んでいるCG映像です。首都高を走る車や新幹線の車窓からこれをぐるりと眺めていく映像になっています。
※2019/2/14現在、下記のCGは www.pierrejeangiloux.com で視聴可能です。メニューから works → video と進んで下さい。
東京をこうしたいんだ、これが未来の東京なんだ、というクリエイター達の夢と情熱を感じました。会場内には二重らせん模型の展示もありますが、周りの風景に溶け込んだこのCG映像を見て初めてリアリティを感じ、文字通り「実感」して感動しました。
そのほかに面白かった作品を数点紹介してみます。展示品は撮影不可なので画像はありません。
第3インターナショナル記念塔(1920)
ウラジーミル・タトリン
第1層の立方体が一年に一回転の速度で回転、第2層の三角錐が1月に一回転の速度で回転、第3層の円柱が1日に一回転の速度で回転する、なんとなく大阪の国立国際美術館に似ている建築物。ビジュアル的にはそれほど感心しませんでしたが、コンセプトが面白かったです。
問われているプロセス/天命反転の橋(1973-1989)
荒川修作+マドリン・ギンズ
マットブラックで機関車のD51のような、また瀬戸大橋のようにも見える横長の構造物です。十数種のブロックに分かれていて、身をかがめないと前に進めないとか床が鏡張りになっていたりとか、それぞれが障害というか拘束的なブロックになっています。要約すると、現代生活はあまりにも便利になりすぎてしまったので、日常生活の中に不自由さを取り込んでみよう、ということらしいです。これもビジュアル的にはまったく感心しませんが、コンセプトは興味深いです。
新東都名所 東海道中 日本橋 改(2012)
山口晃
シン日本橋(2018-2019)
会田誠
両作品ともにコンセプトは同じです。現在の首都高の真上に江戸時代のような木造の日本橋を作ってしまえという案です。
東京都庁はこうだった方が良かったのでは?の図(2018)
会田誠
都庁本案圖(2018)
山口晃
(発注:会田誠、受注:山口晃)
都庁というよりも江戸城ビルディングですね。楽しいです。
最後に
この展覧会、実はもうすでに二度見ています。一度目は連休最終日だったのでそこそこ混んでいてじっくりと見られなかったのと、あとは冒頭に紹介したピエール=ジャン・ジルーの映像をもう一度見たくなったのが理由です。
そもそもこれまでは建築物などまったく興味がありませんでした。暇なので見に行った展覧会なのに、二回見てさらに図録を買うほどはまるとは思いませんでした。建築物にかけるクリエイター達の夢と情熱をひしひしと感じたのだと思います。
建築物に限りませんが、製作物というものは一度完成してしまえば作っているときの夢と希望は無くなります。そして人はまた何かしらの夢と希望を求めて何事かを創り始めるのだなと、そんなことも感じました。