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狂女(1919)

徳岡神泉(1896-1972)
東京国立近代美術館

初見は20年くらい前なのですが、初めのうちは異質すぎて精神的にまったく受け付けない作品でした。怖いですよね。でも後日、下掲の「仔鹿(1961)」が同じ画家の作品であることに気が付き、何故同じ画家の作品なのにこんなにも作風が違うのだろうかと疑問に思い、画集を取り寄せてこの作品の背景を調べて見ました。
それによると、何でもこの女性は下宿先の近所に住んでいた人なのだそうですが、こんな風体ではあっても自分の子どもには愛情を注いでいたらしく、それに感動した神泉は、その表面的な醜さなどを超えた美、異様な凄みを作品にあらわしたかった、とあります。
この解説を読んでからは、そう言われてみればなんか目元に優しさがあるよな、とか感じるようになり、以前感じていたような怖さは無くなって、近所の変なおばちゃんを見るような少し愛情のこもった眼差しで作品を鑑賞することが出来るようになりました。
まあ大正8年ですから、左手のフォークはともかく、このような風体の人など特に珍しくは無かったと思うのですが、ぼさぼさ頭もどてらも昭和の中期だってそれほど珍しくなかったですしね。

仔鹿(1961)

でも徳岡神泉というと、大抵の人はこの「仔鹿」のような、空間からぼうっとあらわれる象徴的な作品群をイメージすると思うので、やはり「狂女」は異質ですね。
もっとも「狂女」は1919年、「仔鹿」は1961年の作品なので、40年以上経っていることを考えれば、作風の違いはそれほど驚くようなことでもないのかも知れませんが。

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