海の人
海の人(1981)
鴨居玲(1928-1985)
油彩/キャンバス
富山県美術館
酔っ払いとかだらしのなさそうなおっさんを描かせたら世界一の鴨居玲の作品です。いや、世界一はドーミエですかね。
これは漁師でしょうか。かごを持ち上げてこちらを向き、なんだお前は、というような表情をしてこちらを見ています。かごが写実的にはっきりと描かれているのに対して漁師の影の薄いこと。にもかかわらず何とも言えない存在感です。
鴨居玲の作品では「1982年 私」が一番衝撃を受けました。何も描かれていない真っ白なキャンバスの前で、これまでに描いた登場人物に取り囲まれて、もはや描く情熱を失って呆然とした表情でこちらを見ている自画像の作品です。東京の回顧展でこの絵を初めて見たときには、その呆然とした生気の無い表情に戦慄すら感じたほどでした。もう一度見たいなと思っていたら、この富山県美術館の次に訪れた石川県立美術館に掛かっていました。この人は石川県生まれだったんですね。