マルセル・デュシャンと日本美術


2018年10月2日から12月9日まで
東京国立博物館

「自転車の車輪」1964年
「自転車の車輪」1964年
(レプリカ/オリジナル1913年)
フィラデルフィア美術館

入口を入って一番最初に出てくる作品がこれです。

画家は絵具や筆などの画材を選択し、題材を選択し、画風を選択して絵画作品を作る。彫刻家は木や石や粘土を選択し、題材を選択し、形状を選択して彫刻作品を作る。その選択するものが既存の自転車の車輪や椅子であっても選択したことに変わりは無いのだから、美術品として成立するのではないか。鑑賞者に対してそのような物の見方を提唱している、美術という概念に対してそのような問い掛けをしている作品なのだそうです。

確かにこの作品は絵画や彫刻を作るよりも手間は掛かっていません。もうすでに誰かが作った物を組み合わせただけなのですから当然です。でも自転車の車輪をキャンバスに描いた絵画は美術品として扱われて、実物の自転車の車輪が美術品として扱われないのは何故なのか。そんなことを考えながらこの写真をみているうちに、この写真だって撮影設定やトリミングや様々な選択をした結果に生まれたものなのだから美術品として十分に成立するのだ、美術館に展示されれば立派なアートなのだと実感できるようになりました。

この作品のように、これまでの単なる「美しい作品」を鑑賞者に提示するのではなく、新しい感じ方、新しい物の見方を鑑賞者に提示するのが現代アートなのだそうです。

 

「デュムシェル博士の肖像」1910
「デュムシェル博士の肖像」1910年
フィラデルフィア美術館

なんだ普通の作品も作ってるじゃんと思いましたが、まあそりゃそうですよね。でも右半身が描かれていないようだし、手がピンクに光ってるし、やはり何かひと味違います。イコン的な雰囲気が漂う作品です。

 

 

 

 

 

「芸術家の父親の肖像」1910
「芸術家の父親の肖像」1910年
フィラデルフィア美術館

この作品も至って普通、、というかセザンヌですよね。見た瞬間に全員そう感じるでしょう。解説を読むと、父親への愛と印象派の巨匠セザンヌへの敬愛を融合させた作品だそうです。

 

 

 

 

 

「ギュスターヴ・カンデルの母親の肖像」1911-1912年
「ギュスターヴ・カンデルの母親の肖像」1911-1912年
フィラデルフィア美術館

なんかだんだんと普通じゃなくなってきます。マグリットとかが描きそうなシュルレアリスム絵画のようですね。

 

 

 

 

 

「彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも(大ガラス)東京版」1980年
「彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも(大ガラス)東京版」1980年(複製/オリジナル1915-23年)
フィラデルフィア美術館

ほぉ・・。出た。訳の分からないやつが出た。確かにガラスの綺麗さってありますよね。ガラスに描いた絵の美しさも理解できます。水森亜土だって、きゅっきゅっきゅ~、とか言いながら透明なガラスに両手で絵を描いていましたからね。

この作品の解説はググるとたくさんでてきますので各自お調べください。

フランスの文学者、アンドレ・ブルトンは真っ先にこの作品の意図を理解して評価したそうです。偉いですね・・ていうか芸術家ってみんな変わってますよね。わたしには無理。理解不能。

 

 

「瓶乾燥器」1961
「瓶乾燥器」1961年(レプリカ/オリジナル1914年)
フィラデルフィア美術館

瓶を乾燥させる器具です。別にデュシャンが発明した訳ではありません。これはレプリカですが、オリジナルはデュシャンがどこかの店頭で気に入って購入したものなのだそうです。

なるほど。そうですか。

 

 

 

 

 

「泉」1950
「泉」1950年(レプリカ/オリジナル1917年)
フィラデルフィア美術館

左下に ”R.MUTT 1917″ とサインがしてあります。これも作品解説はググってお調べください。要約すると、選択という行為、日常的な機能の剥奪、新しい思考の創造、だそうです。普通の一般人は嫌悪感しか感じないでしょう。それで正常です。

 

 

 

 

 

「ポートレート No.29 (二重露光:顔正面と横顔)」1953
「ポートレート No.29(二重露光:顔正面と横顔)」1953年
ヴィクター・オブサッツ(1925-  )

そう言えば写真で二重露光とかってよく聞きますよね。わたしはやったことがありませんが。こういうことなのか、とやっと理解しました。デュシャンの多面性を表現した写真作品、とのことです。ピカソのキュビスムもこういうことですよね。

 

 

 

 

 

 

「ウルフ・リンデによる<大ガラス>のレプリカ(1961年)を通して見た、イヴ・バビッツとチェスをするデュシャン、パサデナ美術館にて」1963
「ウルフ・リンデによる<大ガラス>のレプリカ(1961年)を通して見た、イヴ・バビッツとチェスをするデュシャン、パサデナ美術館にて」1963
ジュリアン・ヴァッサー

デュシャンはチェスの名手としても知られていたそうです。まあそれはともかく・・いいですねえ、芸術家って・・。

 

 

 

 

 

 

 

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