聖ミカエルと龍
14世紀シエナ派
テンペラ/板
国立西洋美術館
大天使ミカエルの冷酷な表情が印象的な作品です。でも龍が小さすぎてスペクタクル性は皆無ですね。逆にこれだけ小さいと動物を虐待している感が漂ってしまって、龍が可哀想になってきます。大天使を称えるイコンとしては失敗作なのではないでしょうか。
それはともかくとして実に魅力的な作品です。武具や背景の飾り紋の装飾感、顔や手の写実感、この対比が作品に象徴的な雰囲気を漂わせています。クリムトが思い浮かびましたが、このような中世の作品からもかなり影響を受けているのでしょう。
あとは龍に対するイメージが東洋と西洋とでは違うことに気が付きました。東洋では龍は崇めたり畏怖する存在であって退治する対象ではありません。やはりこれは唯一絶対神を信ずる西洋思想と、そうではない東洋の違いなのでしょう。