アクタイオンに驚くディアナ
アクタイオンに驚くディアナ (1840)
テオドール・シャセリオー (1819-1856)
油彩/キャンバス
国立西洋美術館
2017年度購入
ぱっと見て目に付くのは中央の明るい肌色の女性の背中、その横の赤い布を持って後ろを気にしている女性、あとは画面右の岩場の青い布にしがみついて後ろを気にしている女性でしょうか。森で水浴びしているみたいですが、なぜうしろを気にしているのかが判りません。
そこで解説文を読んでみます。この女神達は水浴びをしており、その光景をのぞき見た狩人のアクタイオンは罰として鹿に変身させられつつあって、なおかつ猟犬に襲われているのだそうです。踏んだり蹴ったりですね。
なるほどよく見てみると画面左の黒い大きな木の後方では、鹿頭の人間らしき怪物が犬どもと戯れている光景が描かれています。逃げ惑う姿がシュールです。それで青い衣服を取ろうとしている女性の姿や、赤い衣服で裸体を隠そうとしている女性、女神達が鹿頭の方を向いてる理由、が納得できました。
鹿男と猟犬がかなり遠くに描かれているので、解説文を読まない限りこの絵の物語性はさっぱりですが、解説文には「オウィディウスの変身物語に取材し」と書かれているので、変身物語を読んだことのある人ならば絵を見ただけで内容が判るのかも知れません。現代だとこの手の鹿男は、周りの人達に捕まるかお巡りさんに捕まるかの二択なんですが、古代では鹿に変身させられて猟犬に追いかけ回されていたようです。現代の方がまだましですね。
西洋美術館もこの絵を新館に入ってすぐの場所に配置して、このような不埒な行為に警鐘を鳴らしているのかも知れません。